猫を拾った
ガチャッ、と音を立ててドアが開く。
アキさんが、マイバックを提げながら帰ってきた。

このマンションの近くには24時間営業のスーパーがある。

きっとそこで買ってきたのだろう。



「帰るよ、優里」


「はい。...紫」


「は、はいっ?」


「なんかあったらすぐ言うんだよ、一個しか変わんないんだから、遠慮しないで」


「ありがとう...優里さん」



うん、と笑って帰っていく2人。

明日は何を話そうかと、考えることに胸が踊る。



「...随分仲良くなったんだな」


「ふふ、はい。一緒にゲームしてたら、すごい意気投合しちゃって!」


「楽しそうでなによりだ。これから飯を作るから、先に風呂はいってこい」


「あ、私作るのでアキさん先に入った方が」


「いいから早く行け」



急に冷たくなったその言葉。
これ以上何か言って怒られるのも嫌なので、素直に従う。


なにか気に触ることをしただろうか。

ううん、きっとしてない。
なのに、なんで...



【好きだよ、紫。愛してる】


【お願いだから、早く帰ってきて】


【大学にも来てないし、家にも帰ってないんだよね】


【大丈夫、ずっと待ってるから】



そのメッセージを、またスライドして消す。
...ごめんなさい、そう送りたくても、震える指では文字を打つこともままならなかった。
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