御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「あの……」

部屋を出ると先ほどの男がドアの前で佇んでいた。

そうだ。ここは日本じゃない。部屋まで連れて来てくれたのにチップを渡していなかった。

私はなけなしのお金から1ユーロを取り出し渡したが、彼は受け取る様子はなく、私が今からどこに行くのかを尋ねてきた。

会社からは自由に行動していいと言われているのに何故この人はこんなにも私に付きまとうのだろうか。

よく見ればこのホテルのスタッフの恰好と彼のスーツは似ても似つかない。

それにスタッフが必ずつけているネームプレートもない。

やっぱり怪しい。

私の顔を知っているのは本社から連絡があったからだと考えていたが、これは覆面調査なのだ。
ホテルの人に私の顔写真が送られること自体おかしい。

フロントには日本人スタッフもいる中で彼は何故かフランス人スタッフに話をしてチェックインを済ませていた。

私はもちろん英語もできないが、フランス語なんてボンジュールマドモアゼルとメルシーボクーくらいしか分からない。

この人がこのホテルの人だという証拠がないではないか。
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