S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「お待たせ」
落ち着いた低いトーンの声と背の高い人影がテーブルに差した。
神楽雅史、朋久の大学時代からの友人だ。日本でも有数の総合病院で働く医師である。
くっきりとした二重瞼の端整な顔立ちは朋久と甲乙をつけがたく、あのふたりはモデルか俳優かと、周りから囁き声が聞こえてきた。ふたりが揃うとたいていそうなる。
「こんにちは」
「菜乃花ちゃん、お久しぶり」
笑みを向けた菜乃花に雅史も笑顔で答える。
「いつも朋くんがお世話になってます」
「俺は菜乃の子どもか」
形式的な挨拶をすかさず朋久に突っ込まれるが、雅史が菜乃花に代わって返す。
「こいつ、手がかかるからね。子どもより大変かもしれない」
「そうなんです。昨日も――」