S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
なにしろ朋久が所属する『京極総合法律事務所』は、日本四大法律事務所に名を連ねる弁護士法人のひとつだから。
彼の父親が代表弁護士兼CEOを務めており、朋久はその後継者。二十数年間で合併を重ね、今では所属弁護士が五百人を超す巨大な組織だ。国内のみならず海外にも拠点を持ち、ネットワークの広さでも有名である。
主に企業を顧客として総合的なリーガルサービスを幅広く提供し、京極総合法律事務所で対処できない問題はないと言われるまでになっている。
菜乃花の亡くなった母親も結婚前、規模が小さい当時にそこで働いていた。父と出会ったのは、朋久の父親の紹介だったのだとか。
日本最高峰と謳われるT大の法学部在籍中に司法試験に合格した朋久は、事務所内でもエリートとして名高く辣腕を振るっている。
菜乃花もその事務所で働いており、所属弁護士たちのサポートにあたる日々だ。
「あ、そろそろ時間だよね」
ふと目に入った腕時計は午後五時を指している。
「あぁ、間もなく来る頃か」
朋久が時計を確認する仕草をしたちょうどそのとき。