S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

今日の菜乃花は、フィット感のあるカシミヤのニットに華やぎをもたらすマーメイドスカート、キャメルの濃淡でまとめたワントーンのコーデにエレガントな黒のショートブーツを合わせた。

少しでも大人っぽく見えるように選んだ服装である。これに淡いグレーのノーカラーコートを羽織ったら、朋久と並んでも少しは幼さを抑えられるだろう。


「うん、なんか綺麗」
「ほんと? うれしいな」
「で、どうしたの?」
「ううん、べつになにもないよ」


里恵とふたりがかりで台車にダンボールをのせ、首を横に振る。


「えぇ? そう? いよいよ菜乃花にも彼氏ができたのか!?ってニヤニヤしてたんだけど」
「か、彼氏なんてできてないからっ」


それを通り越して結婚相手だけれど。――それも偽りの。


「このフロア内でも男の人たちがチラチラ見てたよ」


里恵がこそっと耳打ちする。
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