S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

そうだ。菜乃花は朋久と夫婦なのだ。
嘘であろうと、それが偽装であろうと、結婚は結婚。菜乃花は朋久の妻である。

でも、だとしたらその先も――?

うっかり想像が逞しくなり赤面する。


「俺と結婚したこと、後悔してるか?」
「ううん、してない。朋くんを助けられたし」


焦って否定し、朋久に責任をなすりつける。

(もっと素直に気持ちをぶつけられたらいいのに)

しかし菜乃花の想いを知ったら、朋久はおそらくこの結婚生活に終止符を打つだろう。お互いに好意がないからこそ成り立つのが偽装夫婦だろうから。
天秤が片方だけ重くなり、バランスを失ったらおしまい。

朋久がキスをしたのは、観覧車マジックにかけられたせい。そこにはなんの意味もないのだと、菜乃花はキスで動揺した心を必死に宥めた。

その後は絶叫系がいきなり苦手になった菜乃花のため、割と優しめのマシンを乗り歩き、お昼にはベンチに座ってホットドックを食べた。

食事中以外は絶えず手を繋がれたまま。偽物夫婦ではあるが、これまでのふたりには考えられない状況だった。

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