S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
怒りに震える手でソファに置き、ふともうひとつある封筒に目が留まる。
(……これはなんだ)
昨夜、菜乃花がバッグから出したものだ。
中に入っていた書類を取り出した朋久は、不可解なタイトルに首を捻った。
「公的兄弟姉妹鑑定? なんでこんなものがここに」
弁護士のためそういった類の書類は見慣れているが、なぜ菜乃花がそんなものを持っていたのか。
表紙をめくると被験者の欄に朋久と菜乃花の名前が記載され、〝99.99%の確率で異母兄弟姉妹であるといえる〟とあった。
「なんだこれは。――まさかこんなもので」
ハッとした。
この鑑定書が原因で菜乃花は離婚を切りだしたのか。
もちろん、朋久と菜乃花が兄妹だという根拠も事実もなにひとつない。
若槻廉太郎だ。あの男が菜乃花を騙し、鑑定書を偽装して離婚をそそのかしたに違いない。
残った酒で鈍っていたはずの勘が冴えわたる。