S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「とにかく黙って俺に抱かれろ」
「待って!」


唇が触れ合うまであと数センチのところでストップをかけたら、朋久は不満そうに眉根を寄せた。


「まだなにかあるのか」
「外はまだ明るいから夜まで待って」
「こんな状態で俺をあと数時間も待たせる気か。その願いは棄却する」
「そんなぁ。そ、それにシャワーだって浴びてないしっ」


今朝、ネットカフェで浴びたきりだ。トイレにだって行ったし、多少なりとも汗を掻いている。


「久しぶりに嗅ぐっていうのに、菜乃の匂いを洗い流させてたまるか」
「やっぱり朋くん、エッチ」
「男はみんなエロいんだよ。頭ン中、好きな子の裸でいっぱいだ。ぐだぐだ言わずに観念しろ」
「――んっ」


有無を言わさずキスが落ちてきた。
やわらかい唇が重なり合えば、反論する気持ちは蒸発するように消えていく。久しぶりに触れ合えた喜びが胸の奥からせり上がり、握られた指先に力が入る。
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