S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

八歳の彼女はボブヘアがよく似合うかわいらしい少女である。


「朋くん、またご本?」
「そうなんだ。おばさんの本棚にあるのはどれもおもしろいからね。菜乃ももう少し大きくなったら読んでみるといいよ」
「それ、読んだら、朋くんともっとお話しできるかな」
「え?」


今でもおしゃべりはよくしているが。
不可解に思いつつ朋久が首を傾げると、菜乃花は両手を前に組んで急にもじもじとしはじめた。


「菜乃? どうした?」
「あのね、朋くん……」


菜乃花は上目使いでチラッと朋久を見て、すぐに視線を下に落とす。なにか言いにくそうに口をもごもごとさせていた。


「学校でなにかあったのか?」


朋久の問いかけに首をふるふると振り、絹のように艶やかな髪が頬のそばで揺れる。
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