S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

目を見開いて朋久の顔を凝視していたら、彼はふっと笑みを零した。
その笑顔に鼓動がさらに速まる。


「ど、どうしたの? なんでそんなこと」
「ふと思ったから素直に口にしただけ。気に入らないなら今すぐ返せ」


左手を菜乃花のほうに突き出す。その手をペチンと叩いて突き返した。


「返せって無理だよー。それに今さら気づいたの?」


狼狽えたのを誤魔化すべく、買ってもらったミネラルウォーターのキャップを開ける。
可愛げのない言葉だと後悔しても、もう遅い。ちょっと頬を赤らめるだけでよかったのに。


「今さら、か。そうだな、今さらだな」


自嘲気味に笑う朋久から目を逸らし、水を喉に流し込む。決してお酒のせいではなく、喉がカラカラだ。
ペットボトルのキャップを締めてひと呼吸おいたら、菜乃のバッグの中でスマートフォンが着信の音を響かせた。

(誰だろう。里恵かな)
< 41 / 300 >

この作品をシェア

pagetop