S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「菜乃花は女の子だったんだな」
「重ね重ね失礼だよ」
女の子だから結婚前提の婚約者の役を頼んだのではなかったのか。
唇を尖らせ、顔でめいっぱい不満を表した。
しかし朋久は楽しそうにクククと笑うばかり。菜乃花の頬をぷにぷに触って遊んだ。
「さて、腹も減ったしなにか食べよう。まだ作ってないなら一緒に作ろうか」
朋久は立ち上がってキッチンに向かった。
「朋くん、疲れてるでしょ? 私が作るから」
「俺はへなちょこな菜乃と違って無敵だからな」
「もう! 朋くん、ひどい。そんなふうに言うなら、婚約者なんて演じてあげないんだから」
膨らませた頬を彼に両手で潰される。すぼめた唇からぷぅと空気が漏れて出た。
「悪い、機嫌を直せ」
髪をわしゃわしゃと撫でられ、満面の笑みを向けられる。
それだけで許してしまう自分は、つくづく甘い。