S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「京極先生は毎年すごい量のチョコもらうでしょう?」
「そうだね」


紙袋にひとつやふたつどころではない。一度に持って帰れないくらい膨大だ。
もちろん義理も混じっているだろうが、本命のものがほとんどだろう。高級ブランドの包みからして本気度がわかる。

中には緊張のあまり直接渡せず、菜乃花に『お願いします』と必死に頼み込んでくる女性もいる。


「今年もすごいだろうなぁ」


里恵の言葉に頷きながら、きんぴらごぼうを口に運ぶ。


「京極先生にはお弁当を作ってあげたりするの?」


バレンタインデーから話が一気に家庭的なものに変わった。


「朋くんは外に出ること多いから」


菜乃花が社会人になったときに『ひとり分もふたり分も同じだから作ろうか?』と言ったが、時間はまちまちだし食べられないこともあるからと断られた。
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