S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

そうして帰宅した菜乃花は、早速夕食の準備に取り掛かった。
今夜のメニューはチーズインハンバーグ。バレンタインデーっぽくハート形に成形したが、すぐに思いなおして楕円形にする。

(本物の恋人じゃないもんね。朋くんに〝なんだこれ〟と引かれたら嫌だし)

なにを勘違いしているんだと呆れられたくない。フェイクだと改めて釘を刺されたら、わかっていても傷つくから。

フライパンでせっせと焼き、コンソメスープまで完成したグッドタイミングで朋久が帰宅した。――両手に紙袋をいくつも提げて。


「おかえりなさい。今年もたくさんだね」


ホワイトデーのお返しが大変だ。


「甘いものは苦手だって何度言えばわかってもらえるんだか」
「それを知っている人ばかりじゃないもんね。でも中にはスイーツじゃないプレゼントもあるんじゃないかな」


朋久がソファに置いた紙袋の中身を上から覗き込む。細長い包みはネクタイだろうか。ほかにもお菓子っぽくないものがちらほらあった。
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