グレーな彼女と僕のブルー
 紗里自身は事故の起こる前日に視たそうなので、準備として近隣住民を装い、学校に電話を入れたそうだ。

 そして事故が起こる数十分前に、大和に"誰も怪我をしない未来"を話すのだが、結果として報道されたニュースでは、大人の目を盗んで忍び込んだ男子児童が池に落ちたらしく、未だに意識不明だと報じられていた。

 あらかじめ右目が捉えた映像では、池に近付く児童など一人もいなかったらしい。

 そのことから紗里は未来に起こることを口にしてはいけないと決めたそうだ。

 ……だったら仕方ない。

 紗里から聞いた悲惨な事故を想像し、今回どんな危機を回避したのか聞くのをやめた。

 けれどひとつだけ教えてもらえるのなら、聞いてみようと思った。

「それじゃあ質問を変えるけど、試合に行って怪我をするのは俺だけなんだよな?」

「……どういう意味?」

「俺の友達の……友田 誠も試合に出るから」

 そこで紗里はまつ毛を伏せて口を噤んだ。僅かに眉を寄せながら、首を捻っている。

「それは分からない」

「……え」
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