グレーな彼女と僕のブルー
「あたしが視たのはあくまでも恭ちゃんの危機だけだから。それ以外は変えようがないし、いたずらに未来は変えられない」

「……そんな、でも」

「あたしが視る映像は、唯一あたしだけが変えていい未来だから。それ以上の行動は起こせないの」

 自分に言い聞かせるような強い口調で、紗里はそう締めくくっていた。


 **

 布団から起き出し、敷布団を蛇腹に畳んだ。掛け布団と枕をまとめて置いたとき、部屋の扉がノックされる。

「おはよう」と遠慮がちに微笑む紗里が、性懲りもなく勝手にドアを開けた。


 捻挫をしたことでどこにも行けず、土日は家で大人しく過ごすことになった。母や紗代子叔母さんにも心配され、安静にして過ごすことを言付けられた。

 学校の課題以外、特にやることもなかったので紗里に頼まれて料理を教えたり、紗里や大和とDVDを観たりして過ごした。

 部活以外で他人とゆっくりするのは初めてで、彼らとの空間にもようやく慣れてきた。

 たまにはこんな休みもいいもんだな……。

 そんなリラックスした日曜日の昼下がり、紗里がリビングで点けたニュース番組が僕に現実の非情さを知らしめた。

 続いてのニュースです、とテレビが音声を放った。
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