激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

「なのにこうして千花と結婚したのは、俺が千花のことを好きになったから」

当たり前のようにさらりと告げられ、千花は全く反応が出来ないまま。

「婚約期間の4年を経て、結婚しようと思ったのは千花だったから。俺は政略結婚なんてしたつもりはない。千花だから…千花を好きだから結婚したんだ」
「颯く、ん……」
「好きだよ、千花。もっと早く言葉にするべきだった。まさか弥生から事情を何も聞かされてないなんて思わなかった…」
「…ずっと、お姉ちゃんの代わりなんだって、思ってた……。だって、なんど、も、連絡…来てないか…って……」

ずっと言えなかった言葉が涙となって零れ落ちていく。

自分は姉の身代わり。そう心の中に燻っていた仄暗い思いが堰を切ったように溢れて止まらない。

自分の頬に触れている颯真の手を握ると、冷たい外気と裏腹にとても熱い。千花はみっともないと思いながらも、激しく泣きじゃくるのを止められなかった。

「そぉ、くんは…ずっと…おねえちゃ、を…待ってるんだって…。けっこんし、きの日も…おねえちゃん、の、連絡…気にして、たから…っ」

必死に言葉を紡ぐ千花に、颯真は額を合わせるようにして言葉を返す。

「最初は無理やり俺と結婚させられる千花が可哀想で、なんとか弥生を探し出したいと思ってそう聞いてた。結婚式の日は…ウェディングドレス姿の千花があまりに綺麗で可愛かったから…。シスコンの弥生なら見たかっただろうなって思っただけだ」

寒さからくる震えとは違った唇のわななきを諌め、千花は期待に満ちた瞳で颯真を見上げる。

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