激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす
辿り着いたホテルは、以前新婚旅行で一緒に泊まったホテルだった。
さすがに前回と同じ部屋は取れなかったと苦笑する颯真だったが、今回の部屋も負けず劣らず豪華で、千花は身の置きどころがわからない。
メゾネットタイプの部屋のようで、入り口から奥に入るとベッドルーム。手前の左側にはバスルームがあり、右手にメゾネットへ続く螺旋階段がある。
広々としたベッドルームは天井も高く開放的でとても明るい。赤と金色を主に装飾された部屋は豪奢でありながら可愛らしく、サイドテーブルには千花の大好きなザッハトルテとフルーツの盛り合わせが用意されていた。
颯真は2階部分に上がることなくベッドルームの脇に置かれた大きな白いソファに腰を落ち着けると、千花にケーキの乗った皿を持たせてくれる。
あれだけ取り乱して泣いたというのに呑気にケーキを食べるのも如何なものかと思いつつ、千花は照れ隠しもあってフォークで一口すくって口に運ぶ。ココアスポンジの間に挟まれているアプリコットジャムの酸味が程良く、甘みの抑えられたクリームとの相性が抜群だった。
「『bonappetit』でクリスマス用にザッハトルテを予約したの」
「あぁ、うちの会社と同じ駅にある店?」
「そう。その帰りに…、お姉ちゃんと颯くんが一緒にいるのを見て…」
「それで急に霧崎さんの家に泊まるって言い出したんだな」
こくんと頷き、もう一口ケーキを食べてからサイドテーブルにお皿を置く。