激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

だからといって、今左薬指につけている颯真と揃いのエンゲージリングに不満があるわけでもない。

戸惑っていた千花だが『俺が千花に結婚式と新婚旅行の記念に何かプレゼントしたいんだ』と言われてしまえばやはり嬉しくて、選んだのはピンク色の小さな花のモチーフのネックレス。

同じデザインの色違いで真っ赤なものや目の醒めるような青い宝石のものもあったが、千花には控えめに輝くピンクの花が主張し過ぎず、かつ美しく映った。

『これ可愛い…』
『うん、似合いそう』

ガラスケース越しに見ていると、穏やかな微笑みを湛えた品のある男性店員がやってきて、千花の指差したネックレスを出してくれた。

可愛いと口にしたものの、ここは老舗宝飾店。
控えめながらこれだけ輝いているのだから、お値段が可愛いわけがない。

おっかなびっくり首元へ当てさせてもらっていると、颯真がなにやら店員と話している。

ドイツ語なので何を話しているのか分からなかったが、千花がキョトンとしている間に同じシリーズだというイヤリングや指輪まで出てきた。

『お目が高いですね、だって。今季新作のコレクションらしい』
『え?!』
『うん。誕生石とは違っちゃうけど、千花にはこのピンクサファイアの淡い色が1番似合う』

満足そうに笑った颯真が目の前の店員に指示すると、恭しく頭を下げて奥に下がっていく。

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