激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす


パーティーからの帰りの車内。千花はエリザベート皇后の話を思い出していた。

窮屈な王宮生活の中、彼女は生まれ持った美貌に磨きをかけ、それを武器にハンガリーのハプスブルクに対する敵対心を和らげ独立運動を沈静化させた。

ハンガリーの民衆から絶大な支持を受け、彼らの自治権を認めるよう皇帝に働きかけ、オーストリア=ハンガリー二重帝国の実現に力添えしたという。

息苦しい宮廷生活、干渉してくる姑・皇太后ゾフィの存在、世継ぎを産むことだけを求められながらも必死で自分に力のみで政治に介入し、自立したエリザベート。

ウィーンのシシィ博物館に行った時、姉の代わりに結婚したという自分との些細な共通点に惹かれ興味を持ち、日本に戻ってからさらに調べてみると、彼女の生涯をドラマチックに描いたミュージカルが上演されていて観に行ったりもした。

――――自分も『自立』したい。

彼女に感化され、そんな思いがずっと胸に燻っている。


「疲れただろ。ありがとう、千花」
「ううん、颯くんもお疲れ様」
「先にお風呂に入っておいで」
「うん、じゃあそうさせてもらうね」

ゆったりとしたバスタブに身を沈め、ぶくぶくと泡を立てながら今日のことを思い返す。

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