激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

新婚旅行に来て舞い上がってしまっている自分を戒めるように、努めていつも通りに振る舞おうと隣の颯真を見上げた。

「トルテも食べていい?」
「もちろん。千花にとったらそっちがメインだろ?いくつでもどうぞ」
「えへへ、うん。でも今日はひとつでいいよ。明日からもたくさん色んなお店で食べ比べしたい」
「じゃあ今日はホテルにあるトルテ自慢のカフェだな」
「う、うん」

ホテルという言葉に鼓動が跳ねる。

昨今の流行に反して盛大に執り行われた挙式と披露宴を終え、無事に入籍を済ませて1週間の新婚旅行にやってきたが、未だに颯真との間にある一線は越えていない。

まだ住居を共にしてもいないし、泊りがけの旅行はこれが初めてだった。


幼少期から厳しい父親の言いつけ通り、5つ年上の姉の弥生(やよい)とともにピアノや習字、着付けや茶道など一通りの習い事をさせられ、進路もすべて父に決められた。

姉と同じ小学校から私立の一貫教育の学校へ通うことは、生まれたときから決まっていたようなものだった。

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