タツナミソウ
2人はこの10年を埋めるように、いっぱい話した。

私は前のめりになって、亮太の両手首をがっしりつかんだ。そして、体育座りをした自分の膝の上にそれを乗せていた。そこに亮太がいると感じられるように。いや、また離れて行かないように縛り付けていたのかもしれない。

どのくらい時間が経っただろう。わからない。

その間に、亮太への愛もいっぱい伝えた。

10年間使われていなかったはずの筆洗バケツは、もうさっきみたいに透き通ってなくて、少しの紫と赤色で染まっていた。

空も私を祝福するように真っ白で、なんでも書いていいよと言ってくれている。あれ。やっぱり、少し灰色がかっている気がする。でも色を足してしまえば何の問題もないだろう。

コップの水はずっと溢れていて、拭いても拭いても間に合わない。でもさっきまで冷たかったはずの水は、とても暖かくなっていて心地良かった。もう拭くのはやめて、これを集めて浸かって、ずっと2人だけの世界で生きていきたい。

これから私たちの、少し奇妙で幸せな日々がずっと続く、続けばいいなとそう願った。
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