タツナミソウ
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「ね、幸子!ねえ!ねえってば、、聞いてる?」

体を揺さぶられて、気がついた。
「新人君が来てから、なんか様子変だよ。」と両手を腰に当てて言う舞に、「そうかな?」と右上を向きながら答えた。
舞は左側の口角だけ上げて目を細めて、「ははぁ〜ん。」と自慢げに言った。

「あたし!気づいちゃった。幸子、新人君の事好きになっちゃったんでしょ!やだ、嬉しい!幸子と恋バナができる日が来るなんて。もうやだ!なになに、顔がタイプなの?こえ?年下好き?聞かせてよ。」

舞がどんどん前のめりになってくるから、後ろにのけぞっていたが、腹筋が限界のところで「まぁまぁ。」と言って両手の手のひらを向けた。
嫌なのか。嬉しいのか。どっちなんだよ。
そう思ったけれど、言わなかった。

舞には、亮太の事を話した事がない。
これからもするつもりはない。

翔平君の事をどう話すか悩んで、学生時代の元彼の弟だと、それだけだと伝えた。
すると舞は、私の元彼の方に食いつきだした。恋愛の話をするのが珍しいから嬉しかったらしい。どんどん大きな声になっていく舞に、たまに人差し指を唇に当てながら話を聞いた。
そして、自分の学生時代の恋愛を語りだし、昼休みはあっという間に終わってしまった。
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