王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい

 「では、早速始めようか」

 そう言って、何処かへと歩いて行くアルに私と兄様はついて行った。




 「よしっ、ここなら大丈夫でしょ」

 
 到着したその場所は、自然豊かな森に隣接している屋敷の裏庭だった。

 青々とした芝生や木々が風に吹かれて揺れている。


 「…?ここでするのか?」

 「そうだよ。ここなら何かあってもそこまで被害  
 は出ないだろうからね」

 「あぁ、なるほど」

 

 「さてと、…2人は属性については知ってる?」

 「「はい」」

 「今現在確認されているのは、特殊属性も加えた
 9属性です」
 
 「基本属性は火、水、風、土の4つ」

 「派生属性は雷、植物の2つです」

 「特殊属性は光、闇、無の3つ」

 「特殊属性を所持している者は滅多にいないで
 す」


 「うんうん。それだけ知ってるなら問題ないね」
 
 
 そう言うと、アルは空中から魔力媒体を取り出した。

 ………は?

 いやちょっと待って欲しい。
 え?なんでこの人何もない空間から取り出してるの??
 というか、なんで取り出したって言える感じなの??
 
 かなり混乱してしまい、言葉がめちゃめちゃになっている。

 
 はっ!兄様はどうだろう?

 
 兄様の困惑顔を想像しながらそっと横を窺う。

 するとそこにいたのは、全くもって通常通りの兄様だった。
 寧ろその現象に対し、冷静に分析、理解をしている。


 え?兄様、何故そんなに冷静なんですか?
 貴方の妹には理解不能です。


 
 「これは無属性魔法の応用かな…?」

 「お、ザライドよく分かったね。そうだよ、これ
 は無属性の空間魔法を応用した収納魔法さ」

 「収納魔法…!流石、王宮魔術師だ…!」

 兄様は目をキラキラと輝かせてアルを見ている。


 珍しい表情だ…。こういう兄様も年相応でかわいい…。


 私が兄様を見てこっそり萌えていると、アルは私が別のことを考えていることに気が付いたらしい。こちらを見て少し苦笑している。
 

 「アンジュ、還っておいで」

 
 「…はっ!す、すいません…」

 「あはは…いや、いいよ。話を脱線させてしまっ
 たのも悪かったし。でも、授業はちゃんと聞いて
 ね」


 「はい、気をつけます」
 

 アルはニコリとし、次の瞬間には空気を変える為に咳払いをしてから、授業を再開させた。

 「ゴホンッ…えーとね、ザライド達は自分の所持属
 性を把握してるよね?」

 「「はい」」

 「魔法、使いたいよね?」

 「「それはもちろん(です)!!」」


 え、もしかして早速教えてくれ…

 「まぁ、まだ無理だけど」

 
 って、違うんかい!!(心の声)

 あぁもう、思わずツッコんじゃったよ…

 一瞬だけどすごく期待してしまったじゃないか…


 そんな不満が顔に出てたのか、アルはこちらを見て笑っていた。

 
 「アハハハッ…って、ごめんごめん。……だから
 そんな怒らないでよ」

 
 「…何故、まだ魔法を教われないんだ?」

 「それはね、その前にまず魔力操作を習得しない
 といけないからだよ。本当は、魔力を感知すると
 ころから始めないといけないんだけど…。ザライ
 ド達は出来てそうだしね」

 「なぜそう思われるのですか?」

 「ん~?だって、君達はアレでしょ?それに、魔法
 書のある区画の魔力を察知してたみたいだしね」


 え、なんでそれ知ってるの?

 

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