王子達は公爵令嬢を甘く囲いたい

 「アル様、ザライド兄様!見て下さい!!」

 手元を見ていた顔を上げ、2人の方を向く。


 アンジュは、初めてしたファンタジーっぽい事に興奮したからか、スミレ色の瞳はキラキラと輝き、白い頬を紅潮させ、満面の笑みを浮かべていた。

 「「うっ…」」

 それを直視してしまった2人は、片や口元に手をやって震えながら下を向き、片や顔を真っ赤に染めてアンジュを見たまま固まった。


 「ぇ、え…?ど、どうしたのですか!?」

 突然挙動不審になってしまった兄様達に、どうしたのかと焦る。もしかして、何かダメなことがあったのだろうか…?

 「ヴッ…ゴホン。あー、アンジュ?これは君のせいだ
 けど、君のせいではないから気にしないで。あ
 と、ダメなこともないからね」

 私のせいだけど私のせいではない??
 え、何その矛盾。
 しかも、私何も言ってなかったのに、なんで「ダメだったことがあったのでは…?」と思ったのが分かったんだろう?…はっ、もしかしてアルはエスp…

 「俺はエスパーじゃないからね」

 え、なんで今のも分かったの?!

 「顔に書いてあったよ」

 oh…ウソでしょ…

 一縷の望みを賭けて兄様の方を覗うと、さり気なくそっと視線を外された。

 「…兄様、なんで目を逸らすのです??」

 「…………ごめんね」

 「謝るぐらいなら嘘でもそんなことないって言っ
 て下さいよ…」

 「そ、それよりも、アンジュは魔力操作と出力を
 成功させられてすごいね」
 
 「今露骨に話をそらしましたね」

 「僕は感じることは出来ても、操作がまだできて
 ないし」

 「まぁいいですけど……。兄様は魔力が回ってい
 る感じがしたと言っていたでしょう?」

 「うん、そうだね」
 
 「私が考えるに、多分操作と出力は同じような感
 じなのだと思うわけなのです」

 そう言って確かめるようにアルをチラリと見る。
 ニコニコと笑顔を返された。

 近くもなく遠くもないってところかな?

 「…つまり、体内の魔力を放出することに集中し
 たらいいってことかな」

 なるほどね。

 
 何かに納得したように呟いた兄様が目を閉じて少しすると、濃密な魔力の気配が辺りを漂い始めた。

 ハッとして兄様を見ると、薄く銀色に光っているモヤモヤが、まるでベールのように兄様を覆っていた。
  

 「ははは…流石愛し子ってところかな…」

 ポツリとアルが声を漏らす。
 
 
 〘きゃあ!みてみて、キレイなまりょくだよ!〙

 〘ほんとだ!!ボクこのまりょくあんしんする!〙

 〘あ、あたたかい気配がするとおもってきてみた
 ら、いとしごさまだぁ!〙

 小さな妖精たちが次々と集まってきた。
 とても楽しそうに、兄様の周りを飛び回る。
 
 
 私はというと、ただその様子を呆然と見ていた。
 
 「兄様…」

 なんだか、兄様が急に遠い存在になってしまった気がして、気がついたら、私は手を伸ばして兄様の上着の袖を掴んでいた。
 



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