誰が好きでも。
「なー、咲巳ってピアノ習ってるっけ?」「あのさっ」


…ハモった。
5秒遅れての理解だ。


(神楽の声、やっぱり低くなってる…)


自分に話し掛けられると尚更その変化が分かる。



それに──


「名前、覚えててくれたんだ。」

自分にも聞こえないくらいの小さな言葉だった。
それでも彼の耳には届いたらしい。
言い方は悪いが、相変わらずの地獄耳だ。


「覚えてるに決まってんじゃん。一緒のクラスだったし。」

嬉しすぎる。
同じ高校に入学して本当によかった。

この高校に行くと決めたのは中学3年生の春。
正直、この高校の偏差値は私よりも下だ。
彼の成績こそ優秀なのだが、真面目なことはしたくないらしく、ここを受けることに決めたらしい。

その決定と同時に、私の進路も決定した。
少しでも共に時間を過ごしたかった。
そしていつか、この想いを伝えたい。
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