恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~
「斎藤、先走るな。落ち着けって」
「こんなの落ち着いて見られないって。離してよ」
「駄目、これはふたりの問題だ。口を挟むべきじゃない」
加藤先輩らしくない強い口調で言い放ち、斎藤ちゃんを羽交い締めにする。
「加藤、やめ」
「君をここに残して、俺だけ名古屋に行くことをしたくない!」
斎藤ちゃんが加藤先輩に反論しかけた言葉をかき消した俊哉さんのセリフで、虚を衝かれたようにフロアが静まり返った。
「ある人に言われたんだ。恋愛もビジネスと同じで、ちょっとしたタイミングを逃すと、気づいたときには駄目になるって。今はそのタイミングじゃないかと思う。だから――」
言いかけて、ふたたび口を噤んだ俊哉さんは両手に拳を作って、一旦俯いた。表情は相変わらず能面みたいな感じで、逆に心配になる。
「笑美、俺と結婚してください!」
俯かせていた顔をあげた直後に、意を決して告げた俊哉さん。あちこちで「きゃっ!」や「すごい」などの声が発せられる。
いきなりのプロポーズで、頭の中が真っ白になった。さっきまでのショックがどこかに飛んでいった衝撃も相まって、膝がガクガク震えそうだった。
「笑美、返事をしてくれ。俺の嫌なところがあるなら、どこが駄目なのか言ってほしい。直せるところは、進んで直してみせる!」
「俊哉さんの駄目なところなんて、どこにもないですよ。むしろ私のほうがダメダメ過ぎて、俊哉さんに相応しくないと思うんです」
「笑美に駄目なところなんてない。どんなときでも笑顔で仕事をして、フロアにいい雰囲気を作ることができるじゃないか。それは俺にはできないし、ほかのヤツだってできない、すごいことなんだぞ」
「でも……」
俊哉さんと結婚、人生を共にする――ついこの間から付き合ったばかりだけど、俊哉さんを深く知れば知るほど、本当に素敵な人だということがわかった。そのせいで、ごくごく普通の自分が交際相手に相応しいのか、ときどき迷いが生じていたのも事実で。
「でも私は、自分に自信がありません。俊哉さんの隣に並ぶには、もっともっと頑張らないといけないと思うんです」
「まっつー! このまま佐々木先輩と離れて、ここで頑張れるの?」
自信のなさを口にした途端に、斎藤ちゃんが核心に迫るような問いかけをした。両腕を加藤先輩に押さえられているというのに、そこから抜け出そうと抗う姿に、なんだか目を奪われる。
「こんなの落ち着いて見られないって。離してよ」
「駄目、これはふたりの問題だ。口を挟むべきじゃない」
加藤先輩らしくない強い口調で言い放ち、斎藤ちゃんを羽交い締めにする。
「加藤、やめ」
「君をここに残して、俺だけ名古屋に行くことをしたくない!」
斎藤ちゃんが加藤先輩に反論しかけた言葉をかき消した俊哉さんのセリフで、虚を衝かれたようにフロアが静まり返った。
「ある人に言われたんだ。恋愛もビジネスと同じで、ちょっとしたタイミングを逃すと、気づいたときには駄目になるって。今はそのタイミングじゃないかと思う。だから――」
言いかけて、ふたたび口を噤んだ俊哉さんは両手に拳を作って、一旦俯いた。表情は相変わらず能面みたいな感じで、逆に心配になる。
「笑美、俺と結婚してください!」
俯かせていた顔をあげた直後に、意を決して告げた俊哉さん。あちこちで「きゃっ!」や「すごい」などの声が発せられる。
いきなりのプロポーズで、頭の中が真っ白になった。さっきまでのショックがどこかに飛んでいった衝撃も相まって、膝がガクガク震えそうだった。
「笑美、返事をしてくれ。俺の嫌なところがあるなら、どこが駄目なのか言ってほしい。直せるところは、進んで直してみせる!」
「俊哉さんの駄目なところなんて、どこにもないですよ。むしろ私のほうがダメダメ過ぎて、俊哉さんに相応しくないと思うんです」
「笑美に駄目なところなんてない。どんなときでも笑顔で仕事をして、フロアにいい雰囲気を作ることができるじゃないか。それは俺にはできないし、ほかのヤツだってできない、すごいことなんだぞ」
「でも……」
俊哉さんと結婚、人生を共にする――ついこの間から付き合ったばかりだけど、俊哉さんを深く知れば知るほど、本当に素敵な人だということがわかった。そのせいで、ごくごく普通の自分が交際相手に相応しいのか、ときどき迷いが生じていたのも事実で。
「でも私は、自分に自信がありません。俊哉さんの隣に並ぶには、もっともっと頑張らないといけないと思うんです」
「まっつー! このまま佐々木先輩と離れて、ここで頑張れるの?」
自信のなさを口にした途端に、斎藤ちゃんが核心に迫るような問いかけをした。両腕を加藤先輩に押さえられているというのに、そこから抜け出そうと抗う姿に、なんだか目を奪われる。