恋の誘導尋問~恋に不器用な先輩に捕われたい~
 明らかに苛立った面持ちの佐々木が、だんだん沈んでいくのを目の当たりにして、斎藤は松尾の寂しげな笑顔を思い出す。

 友人と佐々木が付き合っていることを知り、そのことを開口一番告げたときに、いきなり梅本が話に割って入った。昼休みに呼び出しを食らうというおっかない案件を垣間見たので、一緒にいようかと言ったのに、『全然関係ない斎藤ちゃんが友達っていう理由で、お局グループの先輩方に口撃されるのを見たくない』と守りに入ったため、それ以上口を出すことができなくなった。

 ホントは助けてほしいくせに、相手のことを優先して大切に扱ってくれる友人を、なんとしてでも救いたい。

「佐々木先輩、まっつーの番号教えますね」

「あ? ああ、助かる」

「それと私に、佐々木先輩の番号教えてください。知らない番号から電話あったら、まっつーが出ないかもしれないので。あらかじめ佐々木先輩から電話があることを、きちんと伝えておきます」

 しかも恋愛ポンコツ佐々木のフォローも、そつなくこなさなければならないだろう。

(とりあえずまっつーがどれくらい佐々木先輩のことを好きなのか、全然わからないのも不安だな。中途半端な気持ちでいたら、きっとあの顔面偏差値男になびいてしまう)

 斎藤は目の前に山積みにされた友人の恋愛事情に、頭を悩ませるのだった。
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