バカ恋ばなし
第2章 失恋は煙草の味

高校を卒業した私は、T市の隣にあるP町という小さな町にあるT*大学付属の看護学校に入学した(注:T・Tと続いてしまうが、名称は全く違う)。T*大学は東京都S区内にあり、看護学校は東京と、何故かこの地方のQ県P町と2箇所ある。この看護学校は学生寮も完備されているが、私は寮に入ることが嫌で、ましてや自立心がないため絶対自宅から通学すると決めていた。現に看護学校は自宅からは電車とバスを使って30分くらいで通学できる場所にあった。プリンス譲二君や佳子、清子がいない電車通学はとてもつまらなくてT市駅に着くまでの10分間は人だかりの車両からボーっと車窓を見て過ごした。T駅に着いたら今度はP町行きのバスに10~15分揺られてT*大付属D病院前のバス停まで通うのだ。車酔いの酷い私にとって、バスに乗るのは地獄であった。朝のバスでは車内はギュウギュウしており、しかもP町にはヤンキー高校と言われるC高校があり、目つきが鋭く、顔色が悪くて短ランボンタンのいかにもヤンキーらしき男子高生であふれていた。こんな極悪な雰囲気の車内にいると車酔いも相俟って気持ち悪くなってしまう。辛いバス地獄から何とか学校にたどり着いたが、具合が悪くなり吐き気をもよおしてすぐに保健室行きになったことが何度かあった。看護学校の医務室を利用したのは学年で私が一番多かったと思う。そんな地獄の通学は半年ほど続いた。看護学校へ入学して半年程経過した頃、18歳を過ぎていた私は学校を時々さぼりながら日中T市内にある自動車学校に通い出し、2度目の試験でやっと普通自動車免許を取得したのだ。自動車通学になってからは、朝のバス地獄から解放されて悠々とした気持ちで通学した。当時は中古車だったが、それでも自分の自動車を買ってもらえたことが嬉しかった。毎日車内で好きな音楽をかけて鼻歌を歌いながら運転を楽しんでいた。そして、自動車を運転することが、何だか大人の仲間入りをしたみたいで嬉しかった。
そして、私には看護学校に入学してからしてみたいことがあった。それは「合コン」というものだ。高校と入学した看護学校は女子ばかりで男子と触れ合う機会が全くといっていいくらいなかった。そんな私にとって「合コン」は、素敵な彼氏をゲットできるチャンスということもあってとても憧れていた。
「いつか合コンに行って、素敵な彼氏を見つけたい!!」
そんなワクワクした思いを巡らせながらいつか合コンに行けるチャンスがあることを願い、ヘラヘラ顔で学校に通い、上の空状態で授業を聞いていた。
< 37 / 124 >

この作品をシェア

pagetop