嘘カノでも幸せになれますか

「一輝先輩、ダンを少しの時間貸してもらえませんか？」

一輝先輩は私とダンを交互に見て、

「チエッ、仕方ないな。こんなヤツで良ければ持っていきな」

そう答えてくれて、一輝先輩は自分のクラスの方へ歩いていった。


「ダン、怒ってるの？」

「・・・。」

「ねぇ、ダンってば。こっち見て。これじゃ話ができないよ」

こんなに私がお願いしているのに、ダンはまだ横を向いている。

私は一歩ダンに近付き、ダンの学ランの袖をキュッと握りしめて、クイクイッと引っ張ってみる。


「あーーー、もう！　ユズは本当にずるいな。無意識なのかよ、それ」

「だって、ダンが私を見てくれないから。ダンの顔が怖いし、話しもできないし、悲しくなるでしょ」

「分かったよ。じゃ、あっち行くぞ」

ダンの袖を掴んでいる私の手をダンが掴み、そのまま手を引かれて学校の中庭までやってきた。