【短編】君のすべて

大好き


「しんやぁ…」


小さく呟くけど
返事が返ってくる筈がない。



わかっていても
その名前を呼ばずにいられない…。





目の前に差し出される携帯。




「バカが…
仕方ねぇから明日は
一緒に携帯ショップ行ってやる」




えっ?



顔を上げた先に…慎也がいた。




『…なんで?』




遅いって言ったよね?



「携帯の番号もメアドも変えて
携帯に俺以外の男の番号も
メアドも入れんなよ?」



『‥‥ぅん』



「俺、本当はかなり独占欲強いからな」



『…ぅん』



「ぜってぇ浮気すんなよ?」



『うん』



あたたかい腕に強く抱きしめられる。



『慎也ぁ…』



辛かった涙が
嬉し涙に変わる。



「信じられなくていいから
俺だけ見てろ。
心から信じられるようにしてやる。」



『うん』



まだ不安だよ。



だけどね

慎也の傍にいたいんだ。



慎也の言葉なら信じられる気がするんだ。


ずっと傍にいてくれた人だから…。



「花澄は俺だけを見て
俺だけの事を考えてりゃいいからな」



『慎也だけ見る~』



見上げた先には真っ赤になった慎也。



「バーカ」



『何でよぉ?!』



「いつも俺がおまえの表情1つに
振り回されてる事も知らねぇで…」



クスクス笑いながら
慎也の胸にそっと頬を寄せる。



心臓の音が…早いよ。



でもね

私の心臓も早くなってるよ。


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