【短編】君のすべて

「他の男にもう笑いかけんな。

甘い声だすな。」



『うん…クスクス』



「何笑ってんだよ」



ギューっと抱きしめながら
不機嫌な声が聞こえてくる。



『本当に独占欲強いんだね。』



「当たり前だろ。
ようやく手に入れたんだ。
誰にも触らせないし
ぜってぇ手離してやんねぇからな。」



慎也の背中に腕を伸ばし
強く抱きしめ密着する。




『でもね、慎也の気持ちが
変わっちゃった時は…
先に言ってね?』



裏切る前に言って?



その時は…―――




「変わらねぇよ。」



身体を少し引き離される。



『わかんないじゃん。』



「わかるんだよ。
どれだけ花澄への気持ちで
いっぱいだと思ってんだ。
俺をそこらの男と一緒にすんな。」




口角を上げ
フッっと笑った慎也の顔が近づくから
静かに目蓋を閉じる。



『いったぁ~い』



両頬を抓られる。


「不安になったらちゃんと言え。
1人で抱え込むな。
花澄ほど、目が離せねぇ奴はいねぇよ。」



その言葉に嬉しくて涙が溢れる…。



『慎也が…好きだよ』



抓っていた手が開かれ
両頬に添えられ
そのまま…慎也の顔がまた近づいて来る。



そのまま目蓋に…


頬に…



口唇に優しいキスが降り注ぐ。



< 19 / 22 >

この作品をシェア

pagetop