【新装版】BAD BOYS
髪とおそろいのコバルトブルーが、わたしを見据える。
照明のせいかやけに濡れたように見えるから、まるで絶景と謳われる海面みたいに綺麗だ。似合うとも思う。けれど、わたしは、好きじゃない。
「……その話し方、きもちわるいんだけど」
「……言いたいことはわかんだけどさ、
真正面から"気持ち悪い"って言われたら流石に俺も傷つくんだけど」
「きもちわるいから、前みたいに話して」
「話聞けよ」
速攻でツッコんできた彼が、指でツンとわたしの額を軽く突く。
それからポテトを食べた彼は、不意に「なあ」と声を落とす。
間延びした椿の声は、聞き慣れなくてざわざわする。わたしの前では、彼は普通に話すから。
肩を叩かれて声をかけられた瞬間からずっと警戒していたのは、そのせいだ。
「……お前、帰ってこないのかよ」
「………」
「染にカマかけたけど、何の反応もなかった。
あいつにも帰ってきてること言ってないんだろ。前みたいに隣に住んでないんだな」
ようやく普通の声で話してくれる椿から出た、染、という名前は、わたしの幼なじみ。
今も『花舞ゆ』の頂点に、立っている人。
わたしは転校したときにケータイを持っていなかったから、彼らの連絡先を知らない。
当然連絡も取っていなかったし、椿と染がどこの高校に通っているのかも知らない。
まあ椿の制服を見れば、天皇寺高校だってことはわかるけど。
この制服はよく見かけるし、天皇寺に『花舞ゆ』のメンバーが多いなら、うっかり出くわさないように警戒する必要がある。
「……住んでるわけないでしょ。
住んでたら、染がすぐに気づいてるわよ」