【新装版】BAD BOYS
「今日ノア先輩と約束は〜?」
わたしの話をぶった切ってくるんだから、どうかしてるとしか思えない。
はあ、とため息を隠すことも無くこぼして、「明日の朝早いから来ない」と質問にだけ答えた。
「……ふうん?」
……ふうん、って。
自分から聞いたくせに、ひどくどうでも良さそうだ。彼との関係に口を出されても困るけど、先に聞いてきたのは椿なのに。納得がいかない。
「先輩の予定、把握してんだねえ」
「把握も何も……
大学のスケジュールと、バイトも大体固定のシフトで働いてるから知ってるだけ」
逆に言えば、大学の講義の時間とバイトのシフトの時間はそれぞれそこにいる、ってわたしが一方的に思い込んでるだけで。
実際サボって遊んでるかもしれないけど、ノアに限ってそんなことはないと思う。
「デート、しねえの?先輩と」
「ノアにお金使わせたくないのよ」
普通の大学生なら、バイトしたお金で遊んだりするんだと思うけど。
彼はその付き合いの時間すら割いてまで、一生懸命働いてる。ホストをすることに決めたのだって、給料がいいからっていう理由だし。
わたしと過ごす時間をバイトにまわすことだってできるのに、彼はわざわざわたしに使ってくれる。
それなのにお金まで使わせようとは思わないし、恋人はお飾りじゃないんだから外でカップルらしいことをしたいとも思わない。
逆に世間の恋人はどうして外でデートしたいと思うんだろう、と考えるほどだ。
むしろ家にいれば、ふたりきりで誰にも邪魔されることなく、彼を独占してしまえるのに。
「……相変わらずお利口な彼女」
「何か文句あるの。……っていうか、」