【新装版】BAD BOYS
ほら、いまだって。
そう言えば結局わたしが何も言えなくなることを知ってるから、そんな風に子どもあつかいしているわけで。……どうせ。
「あ、ごめん電話だ。……ちょっと出てくる」
「……いってらっしゃい」
わたしは、彼のいちばんにはなれないのに。
いや、何の罪もない人たちを、無下にはできない。だからこそ、わたしがいちばんになってはいけないんだと、そう自分に言い聞かせる。
誰も悪くないってこと、わたしはちゃんと、わかってるから。
だから、こうして。……いまも、ノアのそばにいる。
「ん、おはよ。
ちゃんと早起き出来たの?偉いじゃん」
リビングから聞こえる、電話の声。
相手が誰なのかわたしが知っているから、わざわざ彼は隠したりはしない。それについても、特にどうも思わないし。
「朝飯食ってから帰るよ。
今日ははなちゃんが用意してくれてるから」
相手もわたしのことを知っているから、お互いに遠慮はない。
薄ら届く声を聞きながら、油の引いたフライパンの上で菜箸を使って卵を引き寄せる。
贅沢を言えないせいでもやもやしたものが広がって、いっそ勝手にスクランブルにしてやろうかなとも思ったけれど。
彼の意見を聞きたくて、わざわざ卵料理を最後まで残しておいた自分が無駄になりそうだから、素直にオムレツをつくった。
……ああ、もう、こういう時に限ってすごく綺麗にできちゃうし。
ノアに下手な方を食べさせようって変な意地を張ってみたけれど、結局ふたつとも同じように出来た。
「すげえ美味しそうじゃん。
ちゃんと焼き加減も俺好みだし」
「……わざと焦がしておくんだった」
「はなびは食材が無駄になるようなことしないでしょ?
……もしかして、またアイツにやきもち妬いてるの?」