【新装版】BAD BOYS
べつに、嫉妬してるわけじゃない。
抱きしめて「俺のいちばんははなびだよ」って言ってくれるノアの気持ちを疑ったことも一度もない。
何もないってことは、ちゃんと知ってる。
じゃなきゃノアとはとっくに別れてるはずだし、わかってるけど、それでも割り切れるものとそうでないものがあるわけで。
「……やっぱ、一緒に住む?」
幾度となくされたその問いに、首を横に振った。
わがままは何度も言いたくなるけど、それでも、ノアに無理はしてほしくない。
よしよしと髪を撫でてくれるノア。
その腕の中で胸元に顔をうずめたら「めずらしいな」とつぶやく声はちょっと嬉しそうで、わたしからの触れ合いを喜んでるみたいだった。
「ごめんな。いっぱい我慢させて」
そんな顔、しなくていいのに。
むしろこれでもできる限りたくさん時間を割いてくれてること、ちゃんとわかってる。
大学生活に加えて、ホストの仕事。
それだけでも充分疲れてるはずなのにここまで会いに来てくれて、こうやって朝までそばにいてくれる。
たぶん、いい彼氏なんだと思う。
ホストは色恋営業だから仕方ないとしても、付き合ってから一度も浮気されてない。
記念日もちゃんと覚えててくれて、どれだけ忙しくても必ず電話をくれる。
唯一わたしの誕生日だけは、プレゼントまで用意してくれて。
「……足りない?」
去年の誕生日にくれた、ネックレス。
わたしの首にかかるそれを優しく撫でた彼は、瞳を覗き込んでくる。薄くグレーの掛かる瞳が、たまらなく恋しい。
「……平気」
それだけ答えて、ゆっくりと離れる。
触れ合いはおしまい、のつもりだったのにまたくちびるが触れ合って。今日は学校行きたくないな、と意識の端で思った。