魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 資料を読み終えたニコラは顔をあげて一言。

「つまり、やっちゃうってことね」

 この重苦しい雰囲気に似合わないような明るい声だった。
 何を、と言わなくても他の二人はすでにわかっていること。

「まあ。よくあることらしいけれど」
 そこで、ニコラは湯気の立っているカップを手にした。ゆっくりと口元にまで運び、ゆっくりと戻す。

「魔力と精力は似て異なるものですからね」
 冷静に、そう努めて冷静にライトは口にする。

「レインって、その。月のものは、きているのよね」

「そうですね」
 トラヴィスの前で答えるには少々はばかれたが、ライトは努めて冷静に答える。そう、冷静に。

「それと一緒に、魔力が流れ出てしまったのかしらね」

 なるほど、そういう解釈もあるのか。
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