魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
「それで、私がここに呼ばれた理由というのは?」
 ニコラはトラヴィスを見つめて言った。

「レインと結婚させてください」
 トラヴィスは頭を下げた。

「トラヴィスくんは、真面目よね」
 ふふっとニコラは笑う。
「別に、結婚しなくてももう婚約者同士なんだし、やっちゃえばいいのに」

「義母さん」
 隣のライトが声を荒げる。

「いえ、実は、前団長との約束でもあるんです。婚前交渉はしない、と。それが婚約するときの条件でした」

「えー、うそ。あの人、そんな約束をさせたわけ?」
 ニコラは笑いながら、お茶を手にする。
「いいんじゃない? 結婚しても。お互いが望んでいるなら」
 そう、彼女もそれを望んでいるなら。

「レインを迎えに行ってもいいですか?」

「ええ、よろしくね」
 ニコラはにっこりと笑った。トラヴィスは硬い表情を緩めた。ライトは、ため息しか出なかった。
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