魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 ベッドの上で正座をしているトラヴィスはやっと状況を飲み込めたようで。
「レイン、私は今まで何を」
 ちょっとだけ蹴られた腹が痛い。

 レインは肩で大きく息を吐いた。それはトラヴィスが元に戻ったことに対する安堵のため息。

「トラヴィス様、お茶にしましょう」
 くるりとワンピースの裾を翻して、レインは部屋を出ていく。
 トラヴィスは投げつけられた上着に手を通すしかなかった。

 着替えてから隣の部屋へと向かうと、鼻孔をくすぐる香りが漂っていた。
「トラヴィス様、どうぞこちらに」
 よくわからないけれど、トラヴィスは促されたまま椅子に座るしかない。

「どうぞ」
 レインはお茶とお菓子をすすめて、トラヴィスの向かい側に座る。テーブルの上に肘をついて、頬杖をつき、ニッコリとトラヴィスを見つめる彼女。
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