魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
 祖母の家で世話になったのは、結局半年ほど。意外にもというかやはり、レインには薬師としての才能もあったようで、そして彼女自身もそれに興味を持ってしまったようで。今後の身の振り方は要相談なのだが、魔導士団はやはり彼女を手放すようなことはしないだろう。

「レイン、帰る前にお前の魔力を()てもいいか?」

「えっと。そうですね、多分、お兄様に鑑てもらうのも、これが最後になりますからね」

「ん、どういう意味だ?」

「いえ、なんとなく」

 きっと、この兄は魔力の回復方法を知っているのだろう。だから、魔力が回復したということは、そういうことであって、だから、つまり。
 もう、鑑てもらいたくない、ということだ。

「やっぱり、魔力はゼロのままなんだな。トラヴィスからは少し回復したとは聞いていたのだが」

 トラヴィスの野郎、余計なことを言いやがって。と、心の中で思っているレインではあるが、それを顔に出すようなことはしない。

 レインはふわりと抱きかかえられ、馬にまたがった。
「疲れたら、俺に寄り掛かればいい」
 後ろから兄の声。
「お前は、俺の大事な妹だからな。結婚しても、それは変わらない」

「はい。ありがとうございます」

 一時期はトラヴィスにやるには惜しいと思っていた妹ではあるが、やはり妹の相手が彼で良かったのかもしれないと思えるようになっていた。その問題はきっと時間が解決してくれたのだろう。

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