魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
22.独占欲の強い男の本性を
「あれ、お兄様でしたか?」

 レインを迎えに行くと、そんな声を出された。すっかりと彼女も大人の女性のような表情をするようになっていた。十八の誕生日も、ここで迎えてしまったレイン。

「俺では不満か?」

「いいえ。ですが、てっきりトラヴィス様かと思っておりましたので」

「あー。あれはな、仕事がな」
 ライトの答えが曖昧だったけれど、レインはなんとなく察した。多分、というか間違いなく、仕事を溜め込んでいる。溜め込んだ挙句、休みを取れなかったということだろう。

「おばあさま、お世話になりました」

「また、遊びに来ておくれよ」

「はい、次はお母様も一緒に」

「いや、ニコラは連れてこなくていいよ。あれの薬は恐ろしくて使えたもんじゃないからね」

 やはり、母親の薬の評判はそんなもんらしい。

「おばあさまも、遊びにいらしてくださいね」

「新婚さんにお邪魔するような野暮なことはしないよ。だけど、ひ孫の顔を見に行くのも悪くはないかもしれないね」

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