魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
24.よくお認めになられましたね
 おかしい、何かがおかしい、とトラヴィスは思っていた。自分は結婚のための休暇として十日程の休みを申請したはず。だが、やはり休みの六日目に呼び出されてしまった。

「おかしい」
 思わず声に出してしまったトラヴィスを、ドニエルが薄い視線で見つめていた。

「団長、本当に申し訳ないことをしたと思っております。ですが、本当にこちらも大変なんです。団長がいなければ、仕事が回りません」

「だったら、もっと人を寄越せ」

「人だけ増えたとしても、優秀な人材がいなければ仕事をさばくことはできません」

「だったら、その優秀な人材を探してくれ。魔導士団の中にいなければ、研究所でもどこからでもいいから、さらってこい」

 トラヴィスのペンを持つ手がわなわなと震えている。

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