魔力を失った少女は婚約者から逃亡する
14.私の子に会いたかった
 ふぅ、と大きく息を吐いてから、ニコラは顔をあげた。

「ごめんなさい、取り乱して。もう、大丈夫」
 言い、カップに手を伸ばすと、残りのお茶を一気に飲み干した。

「あなたたちに言わなきゃいけないこと、たくさんあるのだけれど。何から話したらいいのか」
 はあ、と再びニコラは大きく肩で息をついた。
義母(かあ)さん」
 ライトは手をつけていない自分のお茶を義母に手渡した。すでにお茶は湯気を立てていない。温くなっている。
「ありがとう、ライト」
 ニコラがそれを一気に飲み干すと、ライトが手を伸ばして彼女のカップを奪った。そしてテーブルの上に置く。

「レインは、私とベイジルの子です。それは間違いありません」
 二人に対して丁寧語で喋ってしまっているのは、きっと無意識なのだろう。何かの緊張の表れか。
 ライトは頭ではわかっていたことではあるのに、義母からその口でその事実を突きつけられると、なぜか心の奥がザワザワと音を立てていた。心のどこかで認めたくない、という思いがずっとくすぶっていたのかもしれない。
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