最愛ジェネローソ
第1話*栗山side 大切な彼女
1月下旬。

ここ最近は全体を通して、全く可笑しな気候だった。

秋口になったにも関わらず、まだまだ暑かったり、涼しかったり。

冬に突入したかと思えば、不思議と温かい。

それなのに、突如強い風邪が吹き荒れ、みぞれ雪が空から落ちてくる日だってあった。

寒暖差があっちこっちして、今にも体調を崩してしまいそうだ。

しかし、今日はそんなことも言っていられない。

今夜の予定に想像を膨らませて、仕事に勤しむ。



「今日は、やけに機嫌良いな、栗山。何か良いことでもあったのか?」



苦手としている事務仕事を、意欲的に取り組んでいたところに、同僚の御園(みその)が話し掛けてきた。



「いや。今夜、予定があるだけだよ」

「へぇ? もしかして、デートか?」



図星を突かれ、思わず固まる。



「栗山って全部、顔に出るタイプだよな」

「そんなこと……」



いや、実際、そんなことある。

昔から隠し事は、上手くいった試しがない。

嫌だなと思えば、包み隠せずに、直ぐに顔に出てしまうし。

嬉しいときには、声すら漏れてしまう。

それに、好きな子だって、直ぐにかつての友人等に、バレてしまっていたくらいなのだから。



「彼女、どんな子なんだよ。写真は?」



まさか、こんなにグイグイ来られるとは、思っていなかった。

戸惑うフリをしながらも、満更でもない俺はスマホを手に取る。

言われた通りにアプリを開き、写真を探したが、手を止めた。



「そういえば、彼女の写真、撮ったことないわ」

「1枚も?」

「うん……今、思えば、一緒に撮ったことも、彼女を被写体にしたことも、一度もない」

「マジか」



俺も写真は、得意じゃない。

だから、こちらから提案したこと自体、一度も無かった。

すると、御園は俺のデスクに手をつき、得意気に言った。



「写真、1枚くらいあると良いぞ?」

「写真、か……」

「そうだ。疲れてるときに見れば、癒されるから」

「なるほどな」

「まぁ、ただ、余計に会いたくなって、辛いこともあるけど」



試しに聞いてみるのも、アリかもしれない。

やっと付き合えたんだ。

たとえ少しずつだとしても、もっと恋人らしく、それに近付いていきたい。

そうだ。

今夜、聞いてみよう。


< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop