私達は結婚したのでもう手遅れです!
明日はデートぉぉぉ!
もう無理っ!
煩悩渦巻く私の頭の中はもう俗物のかたまり。
風情ある竹林も今や私にとってはウキウキなBGMにしか聞こえない。
すでに着ていく服も厳選に厳選を重ねて準備してあるからね。
クリーム色のクラシカルなワンピース。
地味かなぁ。
やっぱり、一度妹の百花(ももか)に見てもらって再考しようかな。
そんなことを考えながら、店の自動ドアの前に立った。
お年寄りが増えた昨今、父はドアを自動ドアに変えた。
ドアが目の前で開く。

「ただいまぁー」

お届け物を済ませた私は意気揚々と店に入ろうとして止められた。

「危ない!お姉ちゃん!ちゃんと前見ないと自動ドアにぶつかるよっ!」

その声にハッと我に返ると自動ドアが完全に開くより早く自分の体がドアに突進してしまっていた。
は、はずかしいー!
しかも得意顔で入ろうとしていた。
止められていなかったら、自動ドアに激突していたかもしれない。

「大丈夫よ」

なんて、強がって見せたけど全然大丈夫じゃない。
心の動揺を悟られまいとすぐに仕事にとりかかる。
掃除をしようと布巾を手にした。
デート、デート、デート!
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