私達は結婚したのでもう手遅れです!
「冬悟さんっ!」

思わず、抱きついてしまった。
ハッとしたけど、もう遅い。
身内の前でなんてことを……
冬悟さんからは私と同じ香りがした。
一緒に暮らして短いけど、私はその香りに安心感を覚えた。
私の頭を大きな手がなでて、自分の胸に顔をうずめさせて言った。

「諦めろ。玄馬。羽花はもう俺の妻だ」

「こっ……のやろう!」

起き上がろうとした玄馬さんの上にタイミングよく取り巻きの一人が突き飛ばされ、上にのしかかってまた倒れた。

「間に合ってよかったですねー!仙崎さんがぼこぼこになる前でよかった。歳をとるとなかなか怪我も治りにくいですからねっ!」

竜江(たつえ)さん!」

明るい声で男達の背後をとり、一人の腕を曲げて背中に押し付けていた。

「お引き取り願えますかぁー?」

竜江さんがにこにこと声をかけると、店から逃げるようにして出ていった。
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