私達は結婚したのでもう手遅れです!
けれど、玄馬さんだけは振り返って捨て台詞を吐いた。

「俺は諦めてねえからな」

同じことを礼華(れいか)さんも言っていた。

「矢郷は蛇のように執念深いな」

やれやれと冬悟さんはため息を吐いた。
そして、冬悟さんは私を抱き締めたまま、百花と衣兎おばさん、騒ぎを聞き付けて集まってきた父と職人さん達に頭を下げた。

「俺が嶋倉組の組長の孫なのは間違いありません。けれど、もう足を洗っている。羽花さんとの結婚は真面目なものです。認めていただけないでしょうか」

それは真摯な態度で演技でもなんでもない冬悟さんの本当の気持ちだとその場にいた全員がわかった。
なぜなら、冬悟さんは私に嫌われたくないという顔をして私をみつめていたから―――
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