私達は結婚したのでもう手遅れです!
「奥さんがこっちに三千万円、金を借りてんだよ」

「さ、さんぜんまんっ!?」

「きっちり揃えて返してもらおうか」

それって、どら焼き何個必要なのっ!?
計算できない。
計算機を探して手に取ろうとした瞬間、その計算機をばしっと柄の悪い男の人が手ではらった。
計算機はガシャンと大きな音をたてて床に落ちた。
こ、怖い。
その場から固まって動けなくなった。

「おいおい、乱暴な真似はよせよ」

玄馬(はるま)さん」

そう言ったのは短い黒髪に鋭い目をした人だった。
ジャケットのボタンをはずしていて、黒いシャツの下には金のチェーンがちらりとのぞいている。
いかにもヤクザってかんじの人だった。
筋肉質ですごく強そうなオーラが出てる。
睨まれただけで、足がすくんでしまう。
熊に遭遇したような気分だった。
今、動いたり、視線をそらしたら殺されるっ!
そんな気がして動けずにいると腕をつかまれた。

「三千万円の代わりにお前をもらおうか」

「わ、私っ!?」

「そうだ。ちょうど付き合っている女もいないしな」

な、な、なんで私なのー!?
誰か止めてよおおお!
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