私達は結婚したのでもう手遅れです!
だから、店の手伝いはしかたないとしてもだ。
身辺の警護となれば話は別だ。

「それから、俺も和菓子を買いに様子を見に行くからな」

「はい」

くすりと羽花は笑った。

「俺も羽花に頼みがある」

「なんでも言って下さい!私でできることなら、なんでもやりますっ!」

俺に対する無防備な態度。
毎回、そうやって俺を無意識に煽るから困る。
こっちがどれだけ気持ちを抑えているか、きっと羽花は知らない。

「俺達二人のことだ」

「はい?」

「家族が欲しい」

祖父も両親も俺にはもういない。
もちろん、嶋倉に従ってくれている連中のことは信頼している。
だが、あいつらはまた別だ。
家族ではない。
絶対的な存在が欲しかった。

「そんなの結婚したんだから、私はもう冬悟さんの家族です……」

羽花は恥ずかしそうに笑った。
そして、そっと俺の耳に囁いた。

「もっと家族を増やしていきましょうね」

< 244 / 386 >

この作品をシェア

pagetop