私達は結婚したのでもう手遅れです!
羽花―――そのセリフ、わかって言っているのか?
それともわざとか?
照れている羽花は可愛いが、俺には苦行でしかない。
こうやって俺はきっと一生振り回されて生きていくんだろう……
願いが叶った羽花は嬉しそうにケーキの続きを食べている。
羽花の姿を見ながら、コーヒーを一口飲む。
苦いが甘い。

「羽花には敵わないな」

「え?なにか言いましたか?」

夢中でケーキを食べていた羽花の頬に生クリームがついている。
それを笑って指ですくう。
顔を赤くする羽花を眺める。
会社の一階のカフェ。
なんでもない日の午後。
それが俺にとっては特別な時間。
彼女と一緒に生きていけることが一番の幸せ。
俺の長い片想いはこうして終わりを告げた。
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