私達は結婚したのでもう手遅れです!
けど、和菓子屋という家業に遠慮してそれを言い出せなかった。
私と百花はすっかりテンションが上がってしまって、あれもこれもとフルーツをいれ、生クリームもたっぷりいれた。
仕上がりをまったく考えずに―――


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


夕方、帰ってきた冬悟さんと竜江さん、そして仙崎さんは難しい顔をしていた。
どうしてあんな顔を?
サプライズなのに。
もっと驚いてくれると思っていた私と百花はしんっとして、キッチンのテーブルに座っていた。
いつ食べてもいいようにスタンバイし、お茶と皿を用意して、待っていた私達をジッと見つめる三人。
正しくは私と百花を見て、じゃなかった。
テーブル中央にあるフルーツと生クリームに埋もれたケーキを見つめていた。
なにも言わず、ただ静かに。

「えっと、これさぁ」

竜江さんが口を開いた。

「ケーキです」

「いや、でも、これ」

「ケーキよ」

< 315 / 386 >

この作品をシェア

pagetop